フェルマーの鸚鵡はしゃべらない
寝る前に少しずつ読んでいたので、半年以上かかってやっと読んだ。
邦題は原題とは似ても似つかないが、日本人向けにはこのほうがいいのだろう。
帯には「数学エンターテインメント・ミステリ」となっているけれど、ちっともミステリではない。南米のジャングルに住む孤独な老人が独力で見つけたという、フェルマーの最終定理とゴルドバッハ予想の証明を求めて繰り広げられるドタバタ劇。ギリシャ時代から19世紀くらいまでの数学の歴史を概観しながら物語が進行する。ノンフィクションで読んだエピソードも多数あるけれど、その手の本にはなかなか現れないイスラム圏の数学史にもちゃんと枚数を割いていているのがよかった。登場人物がオーバーアクションなところや、しつこい演出などが、いかにもフランスっぽい感じ。
以下、ネタばれ。
結局、人間たちの奮闘も虚しく証明は手に入らないのだが、鸚鵡が森の中で鳥たちだけを相手に証明をしゃべりつづけるラストが、なんとも皮肉っぽくていい。
こういう小説がベストセラーになるというのは、日本でならちょっと考えられないことだが、フランス人は懐が広いなあ。