エイミー・トムスン『ヴァーチャル・ガール』

ヴァーチャル・ガール (ハヤカワ文庫SF)

ヴァーチャル・ガール (ハヤカワ文庫SF)

SFというよりは、大人向けのファンタシー。マイケル・J・フォックスが出てくるような、出来の悪いハリウッド映画みたい。
少女型ロボットの冒険と成長の物語といったところだが、ロボットはいきなり完成しているし、仲間のAIは特にこれといった説明もなくなんとなく自意識を持つようになったりするし、SF的には見どころは少ない。AIが法律で禁止されている社会という設定なので、ロボットだと見破られないように苦心するあたりがちょっとした新機軸か。
書かれたのは1993年ということだが、それにしてもテクノロジーに関する描写が貧弱。CD-ROMにデータを記録したりモデムで通信したりするというのは仕方ないにしても、コンピュータにできることについての理解が、この作者には乏しいようだ。どんなプラットフォームでもAIが造作もなく「走って」しまうあたり、80年代のサイバーパンクと比較すればむしろ先祖返りといえよう。
まあ、そういうテクノロジーや自意識にまつわる哲学的考察が主題ではないので仕方ないにしても、肩透かしを喰らった感じ。