古屋兎丸『ライチ☆光クラブ』

ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

東京グランギニョルの舞台が元ネタであることは帯に書いてあるのだが、それにしてもタッチが丸尾末広に似すぎているなと思いながら読んでいたら、後書きによると作者は丸尾末広にずいぶん影響を受けたとのこと。この漫画家のタッチは作品毎に変わるしルーツが見えにくいので、あからさまに影響を受けたというのはちょっと意外。
ロボットの「ライチ」が自意識に目覚めていくあたりは『私は真吾』っぽいのだが、これもやはり後書きで言及されていて、舞台では「マリン」だった少女の名前を漫画化にあたってあえて変えたとのこと。
しかし作者の、この原作となった舞台に対する思い入れは相当なものらしく、後書きからそれはひしひしと感じられる。作者は、やっとこの舞台を漫画で表現できるだけの技術が身に付いたと自負しているが、それはまさにその通りであり、元ファンが感傷だけで描いた類いの作品とは一線を画している。作者の自信と客観的な評価が一致するというのは、わりと稀なことだと思う。