冲方 丁『マルドゥック・スクランブルーThe First Compression 圧縮』

なんとなく、頭を使わなくてもいい本が読みたかったので、読んでみた。
ずいぶん人気がある作品のようだし、実際売れているみたいだけど、それほど面白くなかった。頭を使わなくてもいいというのは確かにそうだったが、お子様向けの小説。
登場人物たちの名前が卵や肉などに関連するものに統一されていたり、漢字にルビを多用したりして、スタイルに凝っているというのはわかるんだけど、いまひとつキマっていない。うわべのカッコよさを狙っているというのが透けて見えてしまうし、演出もアニメっぽくて、まるでアニメのノベライズのよう。だからこそ人気があるのかもしれないが。だけどなんで、「犯してやる!」に「ファック・ユー」ってルビ振っちゃうの。
一応SFの範疇に入るのかもしれないけど、出てくるテクノロジーが限りなく魔法に近い。何にでも変身できる能力を持つ兵器というかロボットというかAIみたいなものが出てくる。これはきっとナノテクというオチなんだろうと延髄で予想してしまったわけだが、小さいネズミ型のはずが、消火器に変身してしまう。あれれ、質量保存則を破っちゃってますよ。これはいただけませんなあと思いながら読み進めると、簡単に言っちゃうとこの変身能力というのは、体内の亜空間に貯蔵している物質を取り出すことだという。「亜空間」なんていう言葉を目にしたのは何十年ぶりだろう。この作者のセンスが新しいんだか古いんだか、よくわからない。
三部作の一作目というのは知っていたけど、一話ずつ完結していると思い込んでしまっていた。まるっきり途中で終わっちゃってて、これはさすがに続きを読まないと気持ちが悪い。ので、とっとと続きを読んでしまおう。べ、別に面白いから読むわけじゃあないからねっ。