ヴァーナー・ヴィンジ『マイクロチップの魔術師』

マイクロチップの魔術師 (新潮文庫)

マイクロチップの魔術師 (新潮文庫)

本棚を整理してたら出てきた。たぶん古本屋で買ったのだと思うが、いつどこで買ったのか思い出せない。ちょっと中身を見てみたら、マーヴィン・ミンスキーが解説を書いているので、あわてて読んだ。
発表されたのが1982年ということで、内容的にもまさにサイバーパンク前夜という感じ。コンピュータやネットワークの世界で用いられる言語を「呪文」と表現するのは、この小説がはしりなのかも。関係ないけど、MSが好んで使う「○○ウィザード」というネーミングはバカっぽいなあと常々思っている。
人間の意識がネットワークを介して世界全体に広がっていくという、今となっては珍しくもない話ではある。だが、最後のほうで「どんな種族も、その歴史において、必ずこういう時点に到達するのだ。」と主人公が悟るのだが、これっていわゆるシンギュラリティじゃないか。って、最近流行りのシンギュラリティものを読んでいるわけではないのでよく知らんけど。
ミンスキーによる解説も20ページ以上あって、しかも本編に劣らず面白い。AI(とはミンスキーは言っていないが)が達成されたときに、人間にとって危険なのは、怠惰になって意思決定をそれらに任せてしまうことだみたいなことを書いている。でもそれから約20年が経過した現在では、その危惧が現実になってしまう方向に進んでいるのは間違いないわけで、このままだと科学者や小説家が想像したのとは全く別な特異点に到達しそうな気配がする。