泉昌之『豪快さんだっ!完全版』

豪快さんだっ! 完全版 (河出文庫)

豪快さんだっ! 完全版 (河出文庫)

河出文庫から出てる漫画は漫画文庫のコーナーに置いてないので、あやうく買い逃すところだった。
青林堂から出ていた『豪快さんだっ!』が手元にないので確認できないけど、大きな違いはなさそう。「COMIC CUE」に載ったものなどが新たに収録されているくらいか。
しかし、20年経っても面白いものは面白い。豪快さんのキャラクターそのものもいいんだけど、食い物に関しては例によって細かいことにこだわってしまうという落差がまた。カツ丼を食うだけなのに、「中国の二元論」(陰陽説のことだろう)から宇宙論にまでエスカレートするところなんかは、もう最高だ。
「イヤな奴と呼ばれたい」では、当時流行のニューアカをおちょくっているんだけど、

コンピューターの進化と共に育っていったわけで
その過程
60年代以前の大人たちの底が
見えちゃったわけよ
ボク達にとっては
実際の社会経済よりゲームや
コンピューターのデータの方が
リアリティある訳 はるかに

という科白は、現在でもそう思いたがっている方々が一部にいらっしゃるという意味において、今でも通用する。
そのように何事もチマチマした時代に生きているという息苦しさを豪快さんに吹き飛ばしてもらいたい、そういう願いが二人の作者によるまえがきとあとがきにも表れていて、これは本当に同感だ。