つげ義春コレクション『近所の景色/無能の人』

つげ義春コレクション 近所の景色/無能の人 (ちくま文庫)

つげ義春コレクション 近所の景色/無能の人 (ちくま文庫)

COMICばくに掲載された無能の人シリーズは、こうしてまとめて読むと、だんだん駄目人間の度合いが高くなっていくことがわかる。しかし社会に対して別に背を向けているわけでもないけれども飄々として生きていけるこの主人公たちの存在には、一種の痛快さも覚える。
あと、今さら何言ってんのって感じだけど、コマ割りが実に巧みなことに気がついた。演出として決して派手ではないけれども、緊張と不安、歓喜と哀愁というような対立した感情を際立たせているし、ページ全体におけるコマの大きさと配置が幾何学的にも美しい。フキダシの中の会話ではない、説明的な文章も結構多いのだけど、違和感なくすらすら読めてしまうのはコマ割りのおかげなのかもしれない。
一条さゆりの解説には、ちょっと癒された。