森奈津子『電脳娼婦』

電脳娼婦 (徳間文庫)

電脳娼婦 (徳間文庫)

たったひとつの冴えたやりかた」という題名を見ただけで、他ならぬ森奈津子が書いたと思うと内容がなんとなく想像できて笑ってしまった。でも、この短編集全体を通しては直接的なギャグは控えめかな。
肉体的な痛さも心理的な痛さも、いつもより5割り増しくらい。短編としてはわりと長めの「黒猫という名の女」は、その痛さの描写といい、昭和のSFを思わせるような設定とトリックといい、なかなかよかった。直接的に肉体をいたぶられるわけではないのにいつも痛い目にあってしまうという、ある登場人物の造形がまたいい。
あとがきも面白い。今後は、「これはSFじゃない」という表現は控えて、「オレのSF○○が××しなかった」と言うようにしよう。