サイモン・カーニック『ノンストップ!』

ノンストップ! (文春文庫)

ノンストップ! (文春文庫)

かなり評判がいいようなので、読んでみた。
エンターテインメント小説としては確かに面白くて、頭を使わなくていいのでそれこそほとんどノンストップで読めたけど、超素晴らしいというほどではなかった。出だしでは一気に引き込まれるし、目まぐるしい展開のスピード感もいいのだが。
だけど、もうちょっとこう、細やかな技巧とか気の利いたユーモアなどが欲しいところ。この作者は初めて読んだが、やや下世話というか、筆がすべりがちというか、そんなエピソードは本当に必要なのか?と言いたいところがあったりして。例えば、70歳をとうに超える老婆が性的欲求不満が原因で夫を惨殺したという事件のあらましが、本筋とは関係のないところで語られるのだが、もっと適切なエピソードがあるんじゃないの?このエピソードが不快だとか残酷だから、という皮相的なレベルではなくて、センスが感じられないのよな。解説によると、この作者の小説は同じ登場人物が出てくるという連作に近いらしいので、その関連があるのかもしれないが。
個人的には、舞台がロンドン〜レディングの辺りなのでなんとなく土地勘があるのと、M4からM25に乗ってというくだりなどは楽しめた。