山岸凉子スペシャルセレクションIII 『神かくし』

神かくし (山岸凉子スペシャルセレクション)

神かくし (山岸凉子スペシャルセレクション)

どの短編も名作ぞろい。怖い、美しい、そして巧い。
「黄泉比良坂」「海底より」「夜叉御前」というホラー3連発もいいんだけど、今回読んでみて、改めて「神かくし」がいいなあと思った。
神かくしという怪異に女の情念と兄の執念を絡め、それらが交差するところに母の情あり、また軽いユーモアもあり。再び弟を失う主人公だが、かわりに伴侶を得る。美しいだけかと思われたその伴侶だが、早くも強い母性が垣間見え、二人には幸福な未来が約束されているであろうことが窺える。
そして、明らかにこの登場人物たちの子孫であると思われる現代の少年少女が出てくるPart.2で思いっきり明後日の方向に落とすという、構成がニクい。