山本弘『アリスへの決別』

アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)

アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)

と学会の本は何冊か読んでいるが、山本弘の小説は初めて読んだ。非実在なんとかに代表されるような、最近の風潮に挑んでいるという話を聞いたので。
そういったことに批判的であるという態度は好もしいとは思うものの、創作としてはどうだろう。本人によるあとがきで、「完全にオリジナルな作品」などないと言っているが、たしかにある意味でそれは真実だと思うけれど、小説に限らず作品が人を惹きつけるのは、やはりそれなりの魅力があるからだと思うのよな。たとえ元が模倣や事実の開陳に過ぎなかったとしても。
ただ、最後の2篇は、SFとしてなかなか面白かった。「オリジナリティ」はそれほどないけれど、こういう量子力学人間原理ネタは好きだ。最後のほうの言語遊戯に関しては、筒井作品で言語感覚を鍛えた身としては、少し物足りなかったが。