貝谷久宣『脳内不安物質』

脳内不安物質―不安・恐怖症を起こす脳内物質をさぐる (ブルーバックス)

脳内不安物質―不安・恐怖症を起こす脳内物質をさぐる (ブルーバックス)

初版が1997年とやや古めだしボリュームも少ないが、参考程度に読んでみた。
途切れることなく本を読み続けなければと考えたり、今まさにそうしているように読んだ本はすぐブログに書かないと落ち着かなというのも、強迫性の何かかもしれない。しかしそのようないわば習慣に近い「くせ」のようなものにしても、社会生活に支障をきたすようなより深刻な強迫神経症などの症例にしても、つきつめていけば脳内物質の量やそれらの受容体の過敏といった即物的な理由につきあたるようだ。
本書ではこれらの症例を生理学のレベルでモデル化して説明している。生理学的根拠に基づいた化学物質の投与によって、個人差はあるにせよ症状をコントロールできるというのだから、これはまさしく「しあわせの理由」。
自分自身も実際に投薬によって症状が改善されたわけで、数年前に味わったあのなんとも説明のし難い「どん底にいる」感は治療済みの虫歯のようなもので、今となってはその歯を舌でなぞってもそこにあったはずの虫食い穴の感触が得られないように、「痛み」の感覚は霧散してしまったものの、その記憶だけは根強く残っている。
本書では薬物療法以外にも行動療法なども紹介されているが、それは患者が幸運にも良い医師と出会えて、かつ周囲の人たちの深い理解があってこそ。
ただし、薬物による対症療法といえども一概にあなどることはできず、それによって脳内物質やその他の化学物質に対する過敏性を改善するという効果があるらしい。まあ今のところそれ以外の選択肢はないのだが。