ジャック・ボドゥ『SF文学』

SF文学 (文庫クセジュ)

SF文学 (文庫クセジュ)

ホーガンもベイリーも名前が一度も出てこないぞ!
で、なぜ[sf]の見出しがつかないかというと、「SF文学」について書かれたノンフィクションだから。
しかし、紹介されている作品にはかなり偏りがある。というのは、著者がフランス人で、当然紹介されている作品は欧米圏のものが圧倒的に多く、おそらくフランスにおける出版事情に拠るところが多いのだろう。
それにしてもなー。この本、いったいどんな読者層にとってメリットがあるのだろう。SFファンからすれば、あえて冒頭に書いたように、あの作者の名前が出てこないしこの作品も出てこない、というような不満のタネにしかなならないだろうし、本文が駆け足すぎてこれからこのジャンルの小説を読もうという人にとっては、ちんぷんかんぷんなのではないか。
そして、日本のSF事情にどっぷりなおれからすると、この作者のSF観には違和感がある。ダン・シモンズは「複数のテーマを巧みに操り、ストーリーを複雑化する試み」をしているそうだが、むしろシモンズの場合は古典あるいは物語性への回帰という文脈で評価されていると思う。
つい手にとってしまったけど、これはあえて読まなくてもよかったなあ。