イスマイル・カダレ『夢宮殿』
- 作者: イスマイル・カダレ,村上光彦
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/02/29
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
序盤の、主人公がこの広大な迷宮のような<夢宮殿>に赴き、いかにもお役所仕事といった体でたらい回しにされるカフカ的不条理や、国民の夢までをも管理するというオーウェル的ディストピアの描写はとてもいい。この<夢宮殿>で、主人公が特に業績を上げているわけでもないのに、上司や周囲の顔色を窺いながら彼らが望んでいるであろうと思われる結果を出していくだけでとんとん拍子に出世していくというアイロニーも面白い。結末はちょっとあっけないかなと感じたけれども、なんとも(良い意味で)後味の悪い終わり方だった。
訳者あとがきや解説によると、この作品はアルバニアという特殊な政治的背景や歴史があればこそ、というものらしい。でもアルバニアなんてよく知らないものなー。この作品に限っては、先に解説を読んだほうがより楽しめたと思う。