山尾悠子『夢の遠近法』

夢の遠近法 山尾悠子初期作品選

夢の遠近法 山尾悠子初期作品選

ラピスラズリ』が気に入ったので、読んでみることにした。もう少し待てば文庫になりそうな気もしたけれども、製本が綺麗だったし、エッセイをまとめた栞がわりの小冊子もついてるし。
初期作品選ということで、『ラピスラズリ』のような凝った技巧はあまり見られないが、それでもやはりいい。いわゆる幻想小説もあれば、わりと現実的(?)な話やエッセイのような小説もあって、意外にバラエティに富んでいる。五感のすべてに訴えるような文章も好み。文章を味わうというよりは、まるで、口の中で角氷を弄んで転がしているような感じ。
個人的には、特に「遠近法」がよかった。題名はこの異世界を端的に視覚的に表す言葉ではあるけれども、絵画における遠近法というよりは、この異世界の描写から想起される視覚的イメージの解像度の動的な変化、とでも言おうか。
……うーん、こういう小説の感想を書くというのは難しいなあ。