佐藤史生『死せる王女のための孔雀舞』

死せる王女のための孔雀舞 <佐藤史生コレクション>

死せる王女のための孔雀舞 <佐藤史生コレクション>

21世紀になって佐藤史生の新刊が読めるなんて。といっても、作者はもうこの世にいないのだけれども。
新書館から出たオリジナルの単行本は当然持ってるんだけど、さすがに30年近く前のものなので、紙も黄ばんでかなり劣化してしまっていた。なので、この復刊はまず絵の綺麗さに驚いた。「雨男」の庭の画など、草花の旺盛な生命力でむせ返るような空気感がひしひしと伝わってくる。当時の新書館の単行本には、だいたいもれなく折り返しのカラー口絵が収録されていたんだけど、1ページに納まるサイズに縮小されているけれどもちゃんと収録されている。
七生子シリーズは本当に大好きな漫画で、当時大学生だったオレから見ても七生子は大人に見えた。「大人の女」ではなく、「大人」。だって、こんなに分別があって精神的に自立していて、絵画の元・天才児なのに周囲とのコミュニケーションもそつなくこなすし、学校では優等生で通っているんだもの。だから当時あこがれのキャラクターだったが、今でも七生子にある意味恋しているといえるかもしれない。
単行本未収録だった2作が収録されているのも嬉しい。「一角獣にほほえみを」は、「一角獣の森で」の元ネタかな。こんなに密度が濃くて情報量の多い、それでいてリリカルというすごい短編をデビュー前に描いていたなんて。
この復刊はシリーズ化されるようで、本当にありがたいことです。