ハンヌ・ライアニエミ『量子怪盗』

量子怪盗 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)

量子怪盗 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)

これは読みづらかった。
ルビを多用したりキャラクターによって一人称を変えたりというのは酒井昭伸の十八番なので、そういった翻訳上の技巧は面白いんだけど、たぶん原文でも読みづらいんじゃないか。題名のとおり量子力学や数学がらみの用語が頻出するけれど、どうもピンとこないし、遠未来の物語であることを強調するためなのか、舞台設定や小道具にも凝りすぎているように思う。
なので途中からは細部にはあまりつっこまないようにしてストーリーだけを追っていたが、「太陽系を股にかける量子怪盗」というわりには、ツンデレ少女に頭が上がらなかったり、ちょっとした掏摸を除けば大きな盗みを働いたのも一回だけ。量子力学素粒子物理学を高度に応用したのであろう武器やソフトウェア、仮想空間を駆使したアクションシーンはまあまあ面白かったけれど、そこはかとないラノベ臭が。
この作品は三部作の一作目(またか!)ということだけど、新☆ハヤカワ・SF・シリーズを制覇しようとしている身としては、続きは出して欲しくないなあ。なので続きを出すにしても、せめて青背にしてください。