よしながふみ『大奥』9

大奥 第9巻 (ジェッツコミックス)

大奥 第9巻 (ジェッツコミックス)

8〜9巻で今までとちょっと雰囲気が変わってきたような。平賀源内という強烈なキャラクターが登場したというのもあるだろうけれども、政府としての江戸幕府の体制が安定して、物語が次のフェーズへとシフトしたというか。
平賀源内の他にも、杉田玄白や、名前だけだけれども前野良沢らも登場して、日本ならではの独特な近代化への萌芽が見られる。蘭学と漢学の良いところを取り入れて科学的思考の末に論理的帰結に到達するシーンには、真にSF的な感動を覚えた。
ちょうど今、スコット・ウェスターフェルドの『ゴリアテ』を読んでいるのだけれども、そこではヨーロッパの列強が機械工学に礎をおく「クランカー」と生物工学を主とする「ダーウィニスト」という二つの陣営にはっきりと分かれている中で、日本は両者をハイブリッドさせた独特な社会を築いている。まあちょっとした偶然でしかないのだけど、この符合は面白い。
そんな赤面疱瘡との闘いと並行して、裏で蠢く不穏な権力争いも描かれていて、やっぱり続きが気になる。