庄司創『三文未来の家庭訪問』

三文未来の家庭訪問 (アフタヌーンKC)

三文未来の家庭訪問 (アフタヌーンKC)

『SFが読みたい!2014年版』で紹介されていて興味があったので読んでみた。
おおなるほど、これがSF漫画短編集として薦められる理由はよくわかる。
「辺獄にて」と「三文未来の家庭訪問」はテッド・チャンを経た世代という雰囲気があって、テクノロジーによって人類に齎された新たな課題をとことん、そしてさりげなく突き詰めて考察し未知の地平を垣間見せてくれる。日常的な物語の背景に人智を超えた存在や巨大な勢力・組織を配置しており決してそれらが主役となるわけではないものの、想像力をかき立てられる。
「パンサラッサ連れ行く」は古生物ファンにはたまらない作品。最初の台詞「クシクラゲから聞いた話が…」で、おおっ、となった。バージェス動物群の擬人化というのは違うアプローチでなら今までにも存在したが、この作品のように神学論と結びつけるというのは面白い。アイシュアイアが海綿を食んでいたりハルキゲニアが死骸に群がっていたりという細部も楽しい。
この作者は要注目だな。