タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF

作者の名前には聞き覚えがあると思ったら、黒丸尚の夭折とともに無かったことにされた『ワイルド・カード』シリーズの元締めだった。最近はファンタジー作品が売れているようだが、ファンタジーは興味がないので知らなんだ。
遺棄されていた「連邦帝国環境工学兵団」所属の巨大宇宙船「方舟号」を偶然手に入れた商人ハヴィランド・タフが、方舟号に残っていた豊富な遺伝子プールとクローニング技術を駆使して、食料危機を解決したり、インチキ預言者を懲らしめたり。まあまあ楽しめたけれど、帯にあるように『ハイペリオン』と釣り合うほどではない。訳者が同じだから、こういう売り方にしたのだろうけれど。
強力な生物を無制限にクローニングできるならば、環境戦争だろうが食料難だろうがある程度は解決できそうだ。その手の、人間の浅知恵よりも自然の方が一枚上手で、思い通りにはいかずにしっぺ返しをくらう、というのがSFの定石だが、そういうエピソードはなかった。生態系の複雑さなどが描写されておらず、直球勝負の方法がいつも通用してしまうので、やや安易。そういった意味では、あまりSFっぽくなかった。タフのキャラクターは特異で魅力的だけれど、それが活かしきれていないようにも思った。あまり小難しいことは考えずに、単純に楽しみましょう、という類の作品。
猫がたくさん出てきていろいろと活躍してくれるので、猫好きとしては嬉しかったが。