アンドルー・H・ノール『生命 最初の30憶年』
- 作者: アンドルー・H.ノール,Andrew H. Knoll,斉藤隆央
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2005/07/01
- メディア: 単行本
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例の火星由来の隕石が巻き起こした騒動についても詳しく述べられている。そもそもなぜあの隕石が火星から飛来したということがわかるのかが疑問だったのだけど、これを読んでその理屈がやっとわかった。この火星生命論争以外にスノーボールアース仮説に対しても著者はどちらかというと保守的な態度をとっているのだけれど、むしろそういう人のほうが信用できる。
カンブリア爆発のメカニズムについては、かなりのことがわかっているようだ。一方、エディアカラ動物群についてもある程度定まった見解が得られるかと期待していたが、これについては著者はあっさり「わからない」と認めていて、正直少し残念だった。まあ、わからないものは仕方がない。
ところで、この本でもそうだが、ザイラッハーやグールドなどいわゆる大御所の説が最近になってことごとく覆されてきているように思う。これはこれで健全なことで、古生物学が学問として成熟しつつあるということなのかもしれない。
余談だが、この著者はかなり文学的な指向が強いようで、なかなか凝った表現を好んでする。この手の本では古典文学を引用するのが多いけれど、ジュリアン・バーンズを引用する古生物学者というのは初めて見た。