ダグラス・アダムス『ほとんど無害』

ほとんど無害 (河出文庫)

ほとんど無害 (河出文庫)

これでとうとうこのシリーズも、すべて邦訳された。
訳者のあとがきによると賛否両論あったようだけど、これはこれで良い作品だ。確かに全体的にトーンは暗めで、エンディングも救いがないのだけど、四作目までの後始末をすべてつけたという点で評価できると思う。仮に自分が第一作発表当時からの熱狂的ファンであったなら感じ方は違ったかもしれないが、いち読者としてみたならば、これはいい話だと思う。
また、ここに至ってSF考証にも磨きがかかったようだ。時間と空間の座標軸に加えて、量子力学的な「確率軸」が存在するなんていう設定は、初めて見た。平行宇宙は平行ではない、という表現も気が利いている。たしかに、あれを平行とは言わないよなあ。