松本充代『Dutch Doll』

Dutch Doll

Dutch Doll

この作者の単行本は、見るのも買うのも久しぶりだが、相変わらず痛い話ばかり。
昔の作品は、テーマが同性愛にしても自殺マニアにしても、その絵には生活臭がまったくなく、読んでいるとある種の浮遊感のようなものを感じた。その現実世界との乖離っぷりが、普通の人とはちょっとズレているがゆえにスポイルされる登場人物たちの心理状態とシンクロしていた。この本に収録されている作品群は、描かれてからもう十年くらい経っているようだが、絵柄はほとんど変化していないものの、生活感がぐっと増したように思う。昔の作品のように生活感ゼロというものも中にはあるので(アルビノの話とか)、表現の幅が広がったということかもしれない。
ところで、作者の名前をずっと「みつよ」だと思っていたが、本当は「みちよ」であった。20年以上、間違えて憶えていた。ガーン。