グレッグ・イーガン『順列都市』(再読)
- 作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1999/10/01
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4つの互いに関連するエピソードのそれぞれをさらに細かくわけた短い章からなっているので、テンポよく読める(この構成自体が本書のテーマのアナロジーにもなっているのだが)。展開が単調な『万物理論』ではある種のもどかしさがあったが、そういったことは感じなかった。
テーマである「塵理論」はさすがに憶えていたけど、ディテールは見事に忘れていた。ニック・ケイヴ&バッド・シーズとかピクシーズといった実在のバンドが出てきて、ちょっとびっくり。SF界には音楽ネタを書く作家がどちらかというと少ないと思うのだけど、ディックのグレイトフル・デッドやギブスンのルー・リードなどと同じくらい、イーガン作品にはこれらオルタナなバンドが似合うと思う。ニック・ケイヴはオーストラリア人だし。
しかし、やっぱりイーガンって、ワイドスクリーン・バロックだよなあ。アクロバティックな塵理論はもちろんそうだし、シミュレーションとして存在しているエイリアン側の「人間原理」のせいで、彼らを生み出した人類側の基盤が成立できなくなってしまうなんていうアイディアは、ものすごくスリリングで、読んでいて背筋が寒くなるくらい。
そのエイリアンの宇宙論では無限というものが存在しないのだけど、これは短編「ルミナス」のテーマとちょっと似ているような気がする。どちらも、Brouwerの数学的直観主義に着想を得ているように思うのだが。