ダン・シモンズ『オリュンポス』

オリュンポス 上

オリュンポス 上

オリュンポス 下

オリュンポス 下

前作『イリアム (海外SFノヴェルズ)』から8ヶ月経過したところから物語が再開するが、刊行されたのも同じく8ヶ月後。あえて合わせたのかな?
ちょうど『ハイペリオン』と『ハイペリオンの没落』と同じような関係で、前作は格調高い文章で風呂敷を多いに広げたのに比べ、今作はやや俗っぽくなった感じ。
広げた風呂敷もきちんとたたまれていない部分が多くて、正直、肩透かしを食らった感は否めない。ヴォイニックスが何者だったのか明らかにされていないし、セテボスは突然いなくなっちゃうし。
訳者が註解でも書いているが、この世界におけるQTとかファックスとかの瞬間移動技術など、SF的な小道具の仕組みが棚上げにされたままなのも、ちょっと物足りないところ。ハーマンが原子力潜水艦にわざわざ乗り込んでいって放射能に被曝してしまうというのも、やや強引な気がする。
まあそれでも、派手なアクションと大団円とで、じゅうぶんカタルシスは得られた。この世界のホメロスに該当するのはホッケンベリーかな、と思っていたけど、大外れ。さんざんヒントが出ていたのに、最後まで正解に気づかなかったというのは、我ながら情けない。
今さらだけど、シェイクスピアシェリー、プルーストなどを読んでいたら、もっと楽しめたのだろう。