アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』

この小説を読むのはもう3回目か4回目くらいか。好きなSFを一冊だけ選べ、さもなくば今後ペリー・ローダン以外読むことを禁じる、などともし脅されたなら、この『虎よ、虎よ!』を選ぶかもしれない。それとも、青ジョウントして逃げるか。というくらい好きな小説なので、毎回楽しく読めるし、必ず新しい発見がある。
今回は、キリスト教に関するイコンが意外に多く出てくることに気がついた。ガリーに入れ墨をした「科学人」の首領の名前は「ジョゼフ」だし。ラストで、胎児となったガリーを発見するのが「モイラ」というのはギリシア神話風だが、こういう、キリスト教や神話を連想させる仕掛けがあちこちにちりばめられていたとは。
また、ついこの前まで『幼年期の終わり』を読んでいたのでたまたま気がついたのだが、この2つの小説の最終的なテーマは実は同じではないか。人類が次の段階に踏み出すために、オーヴァーロードの存在が必要か、それとも自力でそうできるポテンシャルを持っているかを問い掛ける、という違いはあるけれど。
新装版ということでカバーのイラストも変わったわけだが、最初は違和感があったものの、だんだん慣れてきた。
翻訳も、「看護婦」が「看護師」になるなど、現代風に変更されただけのものがほとんどだが、「低音線」が「ささやきライン」に変更されたのはなぜだろう?
あと、買った本がたまたまそうなだけかもしれないけど、今どき珍しいひどい乱丁がある。224ページの次が193ページに戻っているのだ。この間の30ページが重複しているだけで、欠落している部分はないようだが。面白いので、交換はしないでおこう。
また、閉じカギ括弧"」"が漢数字の"一"になっているところが、少なくとも2ヶ所ある。もしかして、旧版をOCRで読み込んでテキスト化して、ヤバげな単語を一括で変換したんじゃなかろうか。
それにしても、解説で「近く…出版される」と書かれている『ゴーレム100』が30年経って翻訳されるとは、感慨深いものがある。
ということで、もうすぐ青退職するわけだが、わが赴くは…どこだ?