ラノベ研究

このライトノベルがすごい!2008

このライトノベルがすごい!2008

後学のためにと思って、読んでみた。
最初に読者アンケートによる作品のランキングがあるのはいいのだが、その次のページがもうキャラクターのランキングになっている。各キャラクターについて1ページを消費しているので、作品のランキングよりも割かれているページ数がずっと多い。これはちょっとした衝撃。作品そのものよりも、キャラクターのほうが重要なのね。その次がイラストレーターのランキングで、これはまあ納得できるんだけど。
それにしても、これらのイラストを絵として鑑賞しようとすると、色使いの下手さとかデッサンの狂いとかが目について、ちょっと気持ちが悪くなってくる。また、人物や小道具を立体としてとらえていないのか、それともそうするつもりが全くないのか、明らかに三次元的に不可能だろうという絵が多い。まっとうなマンガなら、二次元化のトリックを上手く使って描いてくれているのだけど。かつての大友克洋ブームのときには、同じような絵柄が乱発して閉口したものだが、それでも立体を二次元として表現する手法も含めて流用されていたわけで、その点では安心感があった。
まあ、ラノベのイラストの様式とはこういうものなのだと言われれば、それまでなんだけど。フィギュアの原形師がこれらのイラストを元に立体化していることを思うと、これぞ匠の技と言わざるを得ない。
読者の感想も多数載っているのだけど、読者の年齢層が低いから仕方がないのかもしれないが、語彙が貧困。また、近代以降培われてきた文学的資産、つまり仕掛けや表現、古典文学に関する教養、SF的道具といった基礎を知らないようで、さんざん出尽くした手法を「すごい」などと評価していたりする。ゆとり教育のせいで、小説の読み方や、共通基盤として知っていなければならない教養がリセットされちゃったとか?ただ、こういう読者の意識や知識に関しては、ラノベの批評言語や手法が未だ確立されていないことが原因なのかもしれない。
後半はサブジャンルごとのお奨めが列挙されているものの、やっぱり読んでみようという気にはならない。「ハルヒ」は教養として一応読んでおこうと思っているが。
などと考えていたところに、筒井康隆が書く予定のラノベ(これの存在は知っていた)のイラストが、「ハルヒ」の「いとうのいぢ」に決まったというお知らせが公式サイトに。うわー。イラストは山藤章二だと思っていたのに(嘘)。やっぱり、ツンデレキャラとかが出てくるのだろうか。考えてみれば、七瀬やパプリカは立派にツンデレだ。