『≒草間彌生 わたし大好き』

美術館に行くと、作品を理解しようとして脳が無駄に回転するせいか消耗してしまう体質なので、最近はあえて行かないようにしている。なので、こういうドキュメンタリーはありがたい。
今日が初日で、監督の舞台挨拶もあるということなので、行ってきた。
せっかく草間彌生なんだからということで、ピンクのカットソーに先日のライブで買ったPのTシャツを重ね着という派手目の格好で臨んだが、ほぼ満員だったものの、他の客はみな無難な格好でがっかり。まあ当たり前か。
自分の作品が一番素晴らしいと言い切る姿はとても素敵だ。自作の詩を朗読したり、歌まで唄ったりもするし、絵を描きながら次々とアイディアが浮かんでくるというのはきっと本当なんだろう。描きながら手を止めることなく普通に会話もこなしているし、一種の自動書記のようなものなのかもしれない。
インタビューで、他の作家の作品からインスピレーションを得ることがあるか、という質問をされるシーンがあるのだが、その質問の意味が本当にわからなかったらしい。他の作家の作品は観賞の対象にはなっても、創作意欲の源はあくまでも自分自身の中にあるということだろう。
その場限りのテレビ収録のスタッフにまで敬語できちんとお礼を言ったりしていて、近寄りがたい雰囲気はあるものの、人間としての器の大きさも窺える。佐藤史生の「まさかのときのハーレクイン・ロマンス」という短編には「比留間弥生」なるいかにもな芸術家が登場するのだが、草間彌生がモデルなのはたぶん間違いないと思うけど、その短編で描かれているような尊大さは微塵も感じなかった。昔はどうだったのかは知らないけど。
着ている服やコーヒーカップなどの日用品も、自身のスタジオで作られたもののようだ。ちょっと欲しくなった。