アルフレッド・ベスター『分解された男』

分解された男 (創元SF文庫)

分解された男 (創元SF文庫)

最近は文学的な小説が続いたので、エンターテインメントが読みたくなった。丁度新装版を買ってあったので、再々々読くらい?
何度読んでもやはり面白い。タイポグラフィなど、後の作品ではじける技法の萌芽が見受けられるし、人物名の一部に「&」や「@」を用いたりするけれん味とサービス精神がたっぷり。
旧カバーの訳文と比べると、「おしでつんぼだな?」という文章が「口や耳が使えないんだな?」などという無難だが不自然なものに修正されている。そのわりには、「つんぼ」という言葉は他のところで使われていたりして、中途半端。
翻訳されてからもう40年以上経っていてさすがに訳文の古さはぬぐえないので、『虎よ、虎よ!』みたいにいっそ新訳にすればいいのに。せっかく名作なのに、若い読者にはぱっと見で拒否反応を示されそうで、もったいない。