星野之宣『星野之宣SF作品集成I [CONTINENT]』

星野之宣SF作品集成1 CONTINENT (光文社コミック叢書“シグナル” 14)

星野之宣SF作品集成1 CONTINENT (光文社コミック叢書“シグナル” 14)

「海の牙」と「サーベル・タイガー」は確かリアルタイムで読んだと思うのだが、当時でもトホホな印象だった。
「ブルーシティ」は読んでいないのだが、これは当時の基準でもセンスが古びていたのと、未完という理由からだったと思う。本書にはその続編の「バトルブルー」が収録されているのだが、さすがにこの時代にはもう絵もスタイルも洗練されている。
BSマンガ夜話で「ブルーシティ」をやっていたことを思い出したので、保存してあったDVD-Rを観てみたところ、いしかわじゅん+夏目房之介のクリエイター陣営と、岡田斗司夫+山本弘のSFオタク陣営との温度差が際立っていた。自戒の念も込めて言うと、オタクがこういう作品を楽しむときの楽しみ方というのはあくまでも特殊なものであって、普遍的な評価基準にはなりえない…という空気を読めないのがオタクたる所以なんだろうな。肩書きはもうオタクからダイエット評論家に変わっているようだが、「肥満度×オタク度=一定」というオタク不確定性原理のようなものがあるのかもしれない。
本書の「解題」を読むと、「ブルーシティ」がいまだに人気を持っていることに対して作者自身が困惑しているようだが、まあこれは作家として自分の作品をちゃんと客観視できているということだろう。確かに収録作の中では、「イワン・デジャビュの一日」が抜きんでている。
あと、光文社の価格設定は本当になんとかしてほしい。判型と概ねのページ数、カラー再現という同じような条件の、小学館萩尾望都「パーフェクトセレクション」よりも千円も高いなんて。