山上たつひこ『人間共の神話』
- 作者: 山上たつひこ
- 出版社/メーカー: 小学館クリエイティブ
- 発売日: 2008/05/29
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
その未完の表題作は、意外なことにSF。が、やはり当時のSF小説と比べてしまうと素朴ではある。ダリやゴヤを意識したような画もあるし、ストーリーも重厚なものになりそうなことを予感させる。ちょうどいいところで終わってしまっているが、もしちゃんと完結していたなら結構な大作になっていたかもしれないし、冒頭の異次元空間のくだりにどう落とし前をつけるつもりだったのか、戦後に雨後の筍のように興った新興宗教と行方不明になった原爆との関連が気になる。
他の収録作は、まあ単行本に入らなかったのもむべなるかなというところだが、「晦夜」は、山上版「ゲンセンカン主人」か「ねじ式」かという感じで、ちょっと面白い。主人公の顔が田村信のキャラクターっぽいなあと思ったが、これは話があべこべで、田村信は山上たつひこのアシスタントを務めていたらしい。