弐瓶勉『アバラ』

ABARA (上) (ヤングジャンプコミックス)

ABARA (上) (ヤングジャンプコミックス)

ABARA (下) (ヤングジャンプコミックス)

ABARA (下) (ヤングジャンプコミックス)

これはわかりやすい作品だ(当社比)。ストーリーがしっかりしているし、冒頭で提示された謎にも一応の回答がなされている。
登場人物も魅力的だしキャラ配分も絶妙。オーソドックスなストーリー漫画もちゃんと描ける、なかなか器用な作家なんだな。
お城のような建物が出てくるのでちょっと連想したのだけど、この作家が描くところの巨大建築物のイメージは、『ゴーメンガースト』シリーズの世界観にちょっと似ていると思った。あまりに巨大すぎて誰も全体を把握できないところや、忘れられて荒廃した空間がそのまま誰の目に触れることなく残り続けるような空虚さとか。
巻末に「Special thanks to 諸星大二郎」とあるのだが、どうやら帯には諸星大二郎の推薦文が載っていたらしい。ある種の呪術的な力が込められているかのような画という点では、共通するところがあるかもしれない。