谷弘兒『錆びた拳銃』

無国籍哀歌 錆びた拳銃 (BEAM COMIX)

無国籍哀歌 錆びた拳銃 (BEAM COMIX)

収録されているそれぞれの短編はそう悪くはないのだが、いかんせん感覚が古すぎる。どれも今世紀に入ってから描かれたとは思えないセンスだし、佐藤まさあきかと。
ガロで描いていたときと比べると、角がとれたというか、あの淫靡で猥雑な雰囲気は薄れてしまった。無国籍というよりは多国籍という感じで、舞台となっている場所がなんとなく想像できてしまいそう。「欧州」なんていう具体的な言葉も出てくるし。
ただ、前述のように、ストーリーは悪くない。描かれた順とは関係ないようだが、本書の後半に行くにしたがって幻想的・寓話的な話が増えてくる。まあオリジナリティには乏しいような気もするが。
あと、主人公がハードボイルドなわりに貧弱そうなところは、相変わらずで面白い。