明智抄『河童少女』

河童少女―エンコウショウジョ (ぶんか社コミックス)

河童少女―エンコウショウジョ (ぶんか社コミックス)

題名は「河童」となっているが、作中では「猿猴」と呼ばれる。「猿猴」はegbridgeで一発で変換できたのだが、http://ja.wikipedia.org/wiki/猿猴によると中国・四国地方では有名らしい。この説明を読むと、河童というよりは『西遊妖猿伝』に出てくる通臂公のほうが近そうだ。
自分のであれ他人のであれ、命というものを客観視できるようになったときにはすでに人生の折り返し地点を過ぎてたりするわけだが、そうすると死という事象を受け入れる覚悟がある程度できつつあるし、親族や知人の死に立ち合っても「しょうがないよね」としか言いようがなくなり、しょせんは化学的な機械にすぎない脳が見せてる幻影がそれ自身の幻影を見せるのをやめただけのことに過ぎない、しかしながら全き無意味なことであるとも言い切れなくてやはりそもそも生きるだの死ぬだのと軽々しく口にしてはいけないだろうしそれなりに尊重しなければいけないのではないか。というようなことを考えながら読んだ。
併録されている短編も素晴らしいし、あとがきには一種の風格さえ漂う。ある作家を追いかけ続けていて本当に良かったと思うのは、こういう作品を読んだときだ。