クローンは故郷をめざす

全体的に彩度を落とした青で構成された画、多用される水のイメージ、「共鳴」というキーワードと水を張ったグラスの共鳴音の関連、などの要素が効果的だった。ひとつのカットが長くて、遠い視点から撮るというスタイルも、このストーリーの雰囲気に合っていた。
クローンとオリジナルのアイデンティティという問題に関しては小説や漫画などでおなじみだが、この映画はちょっと傾向が違っていた。死者であるオリジナルとそのクローンとの間に起こる、劇中で「共鳴」呼ばれる現象については、萩尾望都の『銀の三角』とちょっと似ているかもしれない。その共鳴の中心にあるのが死者の魂であるというのは、一歩間違えるとただのオカルトになってしまうところだが、映像の美しさや地味めなデザインで統一された小道具などがそれを回避している。
途中にクローン技術の倫理的側面を批判するマスコミや群衆のシーンがあるが、これは余計だったんじゃないかなあ。