泉昌之『天食』

天食

天食

久々の泉昌之名義の新刊。
今からもう三十年近くも昔のことだが、初めて買ったガロに載っていたのが泉昌之のデビュー作「夜行」であった。
表題作は、(「夜行」が手元にないので記憶にたよっているが)扉絵のレイアウトや「やっぱり男はキンピラゴボウよ!!」と対をなすかのようなセリフ「やっぱり男は冷えたイモ天よ!!」とコマの背景など、この「夜行」の兄弟作とでも言うべき作品である。もしかすると、「夜行」における駅弁との闘いに敗北した後に辿り着いた街で、彼はこの「天食」において再び「食」と対決することになったのかもしれない。そして彼は決して勝利できないことを運命づけられているかのように、最後のコマにおける独白もまた同じなのである。