森奈津子『からくりアンモラル』

からくりアンモラル (ハヤカワ文庫JA)

からくりアンモラル (ハヤカワ文庫JA)

これはいい。あまりに面白いので一気読み。しかもエロい上にちゃんとSFだ。小生思わず……てなところ。
最初に収録されている表題作でもうグッと心臓を鷲掴みにされた。主人公の小悪魔的な少女が、無垢な少年型ロボットを誘惑して愛撫をさせる。きっと虚無感に襲われるというオチなのだろうと思いきや、最初は冷たかったロボットの指に自分の体温が移っていき、そのぼんやりした快楽というよりも感覚によって、祖母に頭を優しく撫でられた記憶が甦るなんていうくだりでもう。
「性愛SF」ということで、SM、同性愛、スカトロ、獣姦と、タイトルどおりアンモラルな様々な性のかたちがこれでもかといわんばかりに披露されるが、いずれも美しい。そして「切ない」ではなく、むしろ「したたか」。榎本ナリコが解説にも書いているが、披瀝される性愛のかたちはいずれも生殖とは無縁であり、出てくる男はみな虚勢されているも同然だ。少女たちは何度となく犯されても裏切られても、次世代の生を育むことなく、ひたすら快楽だけを享受する。これって実は結構純愛なんじゃないかと思ったりして、そういう意味ではほとんど全ての作品がハッピーエンドといえる。この作者の他の本も読んでみよう。
んで、これだけ特定のキーワードを書いたからには、このエントリにはスパムコメントが沢山来るぞ、と。