鹿野司『サはサイエンスのサ』

サはサイエンスのサ

サはサイエンスのサ

S-Fマガジンではもうずいぶん昔から連載しているので、ネタが古くなっているじゃないかな〜なんて思ったんだけど、そんなことはないんだよね。2009年末の時点での最新情報が盛りだくさんで、いろいろとためになるし。「あとがき」ではなぜこのような文体にしているのかという理由まで書かれていて、へ〜なるほどね〜って感じ。
ということで、内容も盛りだくさんだし、読んでよかった。連載時にはもっとハードな物理・数理ネタもあったと思うけど、そういうのは思い切ってカットしたのかもしれない。
個人的には、『風の谷のナウシカ』の映画は駄作だけど原作の漫画の評価ポイントにはとても同意。一方で、口に出すのもはばかられる掲示板とか動画サイトについては、そんなにたいしたもんじゃあないと思うし、それらの存在が社会や科学にどれくらい貢献しているかというと、微妙なところだと思う。文化や文学という観点では、確かにそれらなしでは立ち行かなくなっている部分があるけれど。
語り口だけではなく、著者が主張している内容も、あえて楽天的に見えるようにしているのではないかというフシがある。でも今はそういう楽天さがあってもいいのかもしれないなあ。もちろん、馬鹿になれという意味ではなくて、基本的な科学的な見方を身に付けたうえで、むしろ悲観的にならないように意識する、というか。いや、おれ自身は人類の未来にはとことん悲観的な要素しか見いだせないし人類なんか滅んでしまえばいいと思ってるんで、みんなは楽観的になるといいと思うよ。