山岸凉子『アラベスク』完全版第2部

何度読んでもこの第2部は、「バレエ漫画」あるいは「少女漫画」という枠を超えて、本当に素晴らしい。ストーリーだけではなく、コマ割りや科白までだいたい憶えていて、次にノンナがこういう表情をする、なんていうことまでわかっているのに、涙がジワっと出てきたりして。
オールカラーで読むのは初めてなわけだけど、ほとんど毎回、トビラと最初の数ページがカラーになっている。当時の少女漫画雑誌では、たしか月刊誌ではトビラがカラーというのは多かったと思うけど、週刊誌ではカラーページはそれほど多くなかったような。と思って調べてみたら、「花とゆめ」は刊行当初は月刊誌だったようだ(この『アラベスク』第2部は、創刊号から連載している)。だから、「花とゆめ」が隔月誌となった2巻では、比較的カラーページが少なくなったのかもしれない。
ところで、亡命したら記録が抹消されるとか手紙が検閲されているとか、「レーニン賞」なんていうのも、時代を感じるなあ。「バレエ・ミニ通信」なる欄外のコーナーもちゃんと収録されているが、このような読者とのコミュニケーションのとりかたも懐かしい。「いつかニジンスキーの漫画を描きたい」あるけど、これは実現したわけだ(『牧神の午後』)。
今回久しぶりに改めて読んでみて思ったが、やはりノンナのキャラクターは『テレプシコーラ』の六花に似ている。精神的に脆い(ように見える)ところや、役の解釈が独創的なところなど。どちらも、実は自分の性格をかなり客観的に評価することができており、そういう意味では決して破滅型の天才にはならないだろうというところも。ただし、「ラ・シルフィード」のノンナはいわば「静」で、『テレプシコーラ』の第1部最終話の六花は「動」か。
メディアファクトリーには本当に期待しているので、この調子で『日出処の天子』(+「馬屋古女王」)完全版を出してくれないかなあ。