山岸凉子スペシャルセレクションIV 『甕のぞきの色』

甕のぞきの色 (山岸凉子スペシャルセレクション 4)

甕のぞきの色 (山岸凉子スペシャルセレクション 4)

表題作は読んでいるはずなのに今ひとつ印象に残っていないのは、たぶん当時の自分が、作者が言わんとしていることをちゃんと受け止められなかったからかもしれない。まあでも今回読んでみて、この"水"に象徴される代替医療に対する作者の態度はよく理解できたし、「甕のぞきの色」というタイトルはまさにぴったりだ。
二篇目の「ウンディーネ」は、水つながりか。「木花佐久夜毘売」はたしかASUKAで読んだ。「スピンクス」は、主人公の少年が精神的に退行している間の主観の表現がやはり素晴らしい。「パニュキス」も印象が薄くて全然憶えていなかったけど、この「ハリーを通して私は自分を愛していたのです」というのは、後の『日出処の天子』にも通じるところがあるんじゃないかな。
「月氷修羅」は全く記憶にないので、初めて読んだのかもしれない。見開きの扉絵はたぶんカラーだと思うんだけど、原色で見てみたい。話はよくできているし、主人公の決断にも共感できるのだけど、「お祖母ちゃんの幽霊」の意味だけがよくわからない。「着道楽」は、くすっと笑えるホラーというか、「ユカタの上に綿入れなんか着込んで」のくだりからドタバタになるのがいい。『恐怖劇場アンバランス』(うろ覚えだけど)みたいなテイスト。