山岸凉子スペシャルセレクションVII『常世の長鳴鳥』

常世長鳴鳥 (山岸凉子スペシャルセレクション)

常世長鳴鳥 (山岸凉子スペシャルセレクション)

このシリーズにしては、収録作のテーマにあまり一貫性が感じられないかなあと思ったが、(精神的・肉体的に)何かが欠落してたり過剰だったりする人物がわりと多く出てくるような気がする。
「顔の石」は、山岸凉子のホラーにしては描写が直接的というか、発生する現象が即物的というか。どことなくユーモアすらも感じさせる。まあこれは、心霊現象というよりも原因がポルターガイストによるものであると、オチを明確に描ききるという、山岸作品にしては珍しい傾向のものだからかもしれない。
「瑠璃の爪」は、作者自身によるメッセージカードにもあるとおり、市原悦子主演のドラマを観ている。ただし、演出の都合上なのか、姉妹の関係が逆になっていて、話もちょっと原作とは違っていたような。
あと、「学園のムフフフ」が収録されていて、驚いた。これはきっと、当時の編集者から正統派少女マンガを描けと言われたのではないかと邪推しているのだが、それでも当時のメインストリームからのズレ具合が面白い。佐藤史生の初期作品のようなズレ。