スティーヴ・フィーヴァー

スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

久しぶりにイーガンの短編が読めるということで。買ってから目次を見たら、ロバート・チャールズ・ウィルスン、マイクル・コーニィ、ディヴィッド・ブリンなども入っていて、ラッキー。
解説にもあるけれど、収録作には「愛」がテーマとなっているものが多い。これは、人間が変革、あるいは無機物との混交やいわゆるシンギュラリティというか「一線を超える」ことによってある種の越境を実現したとしたら、人間性の最も根源的な部分が改めて問われることになるからなのかもしれない。という点では、前述のウィルスンやコーニィの作品は、その見本のようなものだ。
いっぽうでイーガンの作品は、ポスト・ヒューマンという副題からは少しずれているような気もした。21世紀的な『ブラッド・ミュージック』という趣もあるので、そういう意味では大きく乖離しているわけではないが。しかし、バカ小説すれすれというか、実際終盤では思わず笑ってしまった。イーガンって、特に短編では、狙ってこういうひねくれたユーモアを書いているんじゃないかと思っている。
あと、メアリ・スーン・リーとキャスリン・アン・グーナンという、全く聞いたことのない作家の作品が思いがけずよかった。こういう収穫があるのも、アンソロジーの醍醐味。
デイヴィッド・マルセクという作家も初耳だが、好みではなかった。ブリンは、悪くはないがもう少し掘り下げてほしかったところ。締めのオールディスはいかにもという感じだが、流石に上手い。
後半は少しダレてしまったが、総じていいアンソロジーだった。