高橋昌一郎『知性の限界』

知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性 (講談社現代新書)

知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性 (講談社現代新書)

『理性の限界』がたいへん面白かったので、これも読んでみた。やっぱり面白い。いや、「面白さ」という点では、『理性の限界』よりも上だろう。
『理性の限界』は不完全性定理不確定性原理という、まあおれ的には得意なフィールドだったので、ハードルは低かった。けれど本書に関しては、ウィトゲンシュタインを大学の教養課程で齧った程度だったので難しいんじゃないかなあと思っていたが、あにはからんや、こちらのほうが内容は軽めだし難易度も低め。この著者の本なら、『知性の限界』→『理性の限界』→『ゲーデルの哲学』という順番で読むのがいいのかもしれない。
本書は後半に行くにしたがって勢いがついて内容もやや過激になってくる。特に「方法論的虚無主義者」が、虚無主義者のくせに大活躍する。なんだかこの人はイーガンの小説に出てきそうなキャラクターだ。あと、今までぞんざいな扱いを受けてきた「カント主義者」が意外なことに最後の最後にいい役どころを与えられているというのも可笑しかった。
というふうに、群像劇としてもたいへん楽しい、まさに一粒で二度おいしい本だ。また、「おわりに」ではテレビによく出てくるある人物をかなり大胆に批判していて痛快なのだが、これが嫌味っぽくないところが、作者の懐の広さを感じさせる。