川原由美子『ななめの音楽』2

眠れぬ夜の奇妙な話コミックス ななめの音楽? (ソノラマコミックス)

眠れぬ夜の奇妙な話コミックス ななめの音楽? (ソノラマコミックス)

これはとてもいい。常に進化してきた少女漫画の文法のひとつの頂点といっていいんじゃないか。決して派手とはいえないが読むものの視線を捉えて離さない画と、あまりにも見事な伏線や細やかな演出が見事すぎて、文句のつけようがない。
これは成長と喪失の物語ではあるが、題名にもある「ななめ」というキーワードがとても重要な役割をもっている。重力の束縛を受けた「ななめ」の存在は、地上では決して安定することはない。だから「ななめ」の存在は、地上の軛を逃れるために重力から自由になることを切望するのだ。いや、むしろ本来的にそのような傾向を持つがゆえに、地上においては「ななめ」になっているように見えるのかもしれない。
しかしラストはびっくりしたなあ。この話がいったいどこに「着地」するのか、もしかしたら着地などしないまま終わるのではないかと思いながら読んでいたが、まさかこうくるとは予想もしていなかった。これはかなりの力技というか、一歩間違えたらたいへんなことになってしまうアクロバット飛行だ。