山岸凉子『日出処の天子』2, 3

厩戸王子が穴穂部王子を暗殺した後の毛人とのやりとりのような、セリフを省略することによって成り立つ演出が素晴らしい。これはこの作品を初めて読んだときには衝撃的だったし、再読するたびにいつもすごいなあと思ってしまう。
朝廷・蘇我氏物部氏との争いと前後して、王子と毛人の距離感が微妙に揺らぐのは、王子の親子関係や毛人の性格以外にも、第二次性徴なんかも関係しているのでは?と今回思った。そのあたりで二人それぞれに女性の存在が影響してくるし。
なし崩し的に二人の関係が修復されるのは、もちろん毛人の包容力の大きさにあるのだろう。王子の「能力」や、カリスマ性と裏腹の酷薄さなどをいったん括弧でくくって王子という人間そのものを受け入れ、そして惹きつけられる。でもそんな平穏な期間はごく短い。布都姫がもう出てきちゃったものなあ。