フィリップ・K・ディック『空間亀裂』

空間亀裂 (創元SF文庫)

空間亀裂 (創元SF文庫)

『未来医師』はもう3年前か。しかしまだディックの初訳が出るのだからすごい。「有色人(コルズ)」、「高層集合住宅(コナプト)」、「恒常新聞(ホメオペイプ)」。うーん、ディックだなあ。
設定はかなり無茶苦茶だしストーリーはあちこちに飛ぶし、登場人物もやたらと多いわりに重要なのはほんの数人。でもこのスピード感のあるジャンクな感じが楽しめた。アメリカ初の黒人大統領候補ともあろう重要人物がSPもつけずに大活躍、しかも描写が妙に人間くさいというのも、いかにもディックらしい。
今回も解説がとても面白くて、痛快。確かに、(いい意味で)あまり深く考えずに楽しんで読めるSFというのは、最近少なくなったような気がする。もちろんそういうのばっかりでも困るのだけど、バランスが重要だよなあ。