りんご飴音楽祭2013 〜水曜日のカンパネラ編〜


二日続けてライブへ。まさか鹿の解体が見られるとは思ってもいなかった。このために遠征するというのもアレだしなーと思っていたところだったので、お仕事さまさま。
チケットは水曜日のカンパネラのホームページから予約フォームで予約していたのだけど、受付で名前を言ったら自分の名前がリストの一番上にあってちょっと照れた。
元々「りんご音楽祭」というのが松本市で開催されていて、りんご飴をキャラクター(?)にしている水カンがそれにかけたらしく、実際今年水カンはりんご音楽祭に参加している。りんご音楽祭のグッズなども置いてあって、水カンのスタッフは、松本市のが本物の「りんご音楽祭」で、うちのはニセモノ、と言っていた。もちろんジョークで。
前述のように鹿の解体はあるわ落語はあるわで、音楽祭というよりはイベントに近いけれども、これは水カンとしてのライブで今日コムアイが言っていたように、このノリが水曜日のカンパネラである、ということだろう。
落語はテレビなど以外では初めて生で観たけれども、面白かった。落語に関しては素人なので比較はできないけれども、まず声が聞き取りやすいのに驚いた。落語家だからそれが当然なのかもしれないが、アナウンサーの声よりもずっと聞きやすいしすんなりと頭に入ってくる。まさかのSF落語というのをやってくれて、これはまあちょっとした掴み程度のネタだったのだけど、SF界には実際に落語研究会にいた横田順彌や堀晃がいるし、筒井康隆の「産気」を演じている落語家がいるようにじつは落語とは親和性が高いんだよな。だからちょっと嬉しかった。
鹿の解体は、コムアイの「師匠」の方がイケメンでしかもトークが面白く、ベタな下ネタも交えつつの解体というのがとても面白かった。ここでいう「面白い」というのは、「興味深い」というのと「可笑しい」というのを兼ねている。魚類や鳥類の解体と違って哺乳類の解体というのは今やよほどの田舎でも実際に目にすることは稀なわけで、それをマグロの解体のように「ショー」として見せるというのは確かにリスクが大きい。けれどもこの師匠曰く、「楽しく解体したほうが楽しく食べられる」のだそうだ。仏陀のウサギのエピソードが子供時代に植え付けられているからか、哺乳類を、特に死にたてのを解体し食するという行為にはある種の禁忌というか後ろめたさがつきまとうが、確かにどうせ食べるなら楽しく食べたほうがいい。
実際には解体の前に捕獲し屠殺するという行為があり、さらに血抜きと内蔵を取り除くという処理が必要なわけで、生命が倫理が云々という視点も取り入れるとそのあたりにまで突っ込んで言及しなければならないが、このイベントにおいては「解体」という作業に焦点を絞ったところが好感が持てるし水カンらしいとも言える。最初は血と内蔵を抜かれただけの鹿の死体だったものが、ものの30分で肉の部位と毛皮と骨とに分けられていた。この過程での師匠の解説が見事で(地元でワークショップをやっているそうだ)、実際に食べることを目的とした場合に問題となる、あるいはより美味しく食べるに必要となる技術を解剖学的見知からも解説してくれて、場内からも感心した声が上がっていた。解体に参加したコムアイとゲストのBiSのファーストサマーウイカも言っていたが、最初は「死んだ鹿」だったものが徐々に食肉へと見る側の意識が変化する。最後には「美味しそう」と言っていたが、たしかにこれは新鮮な肉の塊以外の何ものでもなかった。これは観ることができて本当に良かったと思った。物販で鹿肉料理を売っていたので食べてきたが、美味かった。
水カンのライブはこれがまだ二度目だが、曲は毎日のように聴いているしUstreamもできるだけ観るようにしているので、もうすっかり常連な気分に。ちゃんとちゃぶ台返しもやった。鹿肉を食べている間にライブが始まってしまったので出遅れて前のほうに行けなかったのが残念だけれども、今日のようにそこそこの広さの会場でもちゃんと全体に目配りしていた。前述のBiSのメンバーとのデュエットや生バンド(ドラムとギター)との共演も良かった。新曲「牛若丸」は、コムアイが歌の前に歌詞を覚えているか自身がないと言っていたが、自信がないどころか半分くらいスキャットだった。けれどもこのユルさはご愛嬌というよりもむしろもう一種の芸に近いのではないかというくらいに、皆に受け入れられていた。
やはり水カンはいい。そろそろワンマンでやってもいいのではという声もあったけれども、自分としてはまだ主役を張れない&水カンの色々な面を見せるためにはこのようなイベント形式のほうがいいと思った、というようなことをコムアイが言っていたが、確かにまだまだ得意なネタを持っているはずだし(映画など)、どちらかというと周りを巻き込むタイプのユニットだと思う。まあいつかはワンマン(きっと半分くらいはユルいMC)も観たいけれども、いずれ機会があったら、でいいや。