諸星大二郎『子供の情景』

悪くはないんだけど、どれも何度も読んで全てのコマを憶えているといっていいくらいのものばかりなので、さすがに新鮮味がなかったな。全体に漂うこのディストピア感は好きだけれども。
最初に読んだ当時もそうだったけど、「マンハッタンの黒船」は、ギャグとしてはなかなか秀逸なのだけどそれ以上の意味が見いだせないんだよなあ。「デモクラシー・マシン」の設定も、もっとこう、いきすぎた民主主義というような描写が予めあったほうが効果的だと思うし、アメリカ人民の総意が鎖国と結びつく因果関係もよくわからない。
けれどもこの巻の描き下ろし「彼方より」と「クーリング・オフ」は、『子供の情景』というテーマにぴったりでなかなかよい。