山岸凉子スペシャルセレクションXIV『メタモルフォシス伝』

メタモルフォシス伝 (山岸凉子スペシャルセレクション)

メタモルフォシス伝 (山岸凉子スペシャルセレクション)

スペシャルセレクションは『妖精王』で完結したのだと思ってた。もう2年以上経ってるし、同封されているメッセージカードには「バイビー」と書かれていたし。でもこの『メタモルフォシス伝』があったか。
角川から出ていた全集で読んで以来かな。だからあまり記憶に残っていなかったのだけど、このストーリーからすると、もしかしたら作者の中でこの作品を改めて世に出したいという気持ちがあったのかもしれない。併録の「ネジの叫び」も「恐怖の甘い物一家」も、自我を主張しないことによる悲劇(または喜劇)を描いたものだし。
意外にも「ネジの叫び」は初めて描いた恐怖物で、しかも当時は恐怖物は嫌いだったという。それにしては、後に続く山岸ホラーの特徴が早くも現われていて、実に興味深い。
また面白いのが「続・恐怖の甘い物一家」で、30年も経ってから続編が読めるとは思わなかった。オレ自身は甘いものはどちらかというと好きなほうで、晩ゴハンに「おはぎ」が出てくるというのもわが家では実際にあった。赤飯を甘く作ったりとか、食事に甘いものが入るのは北海道あるいは北国特有の文化なんだろうか。そして、佐藤史生の「バナナ・トリップに最良の日」に出てくる「キョーフの甘いモノ」という台詞も、この作品に関係しているのだろうか。
まあとにかく、このシリーズがまだ終わっていないということであれば、『青青の時代』や『ツタンカーメン』、「白眼子」なども期待していいのだろうか。期待しちゃいますよ。