高山和雅『天国の魚』

天国の魚(パラダイス・フィッシュ)

天国の魚(パラダイス・フィッシュ)

「高」はいわゆるはしご高。
青林工藝舎でサイン本を購入。表紙や見返しではなく巻末にサインを入れるというのがこの作者らしい。
冒頭から、この物語のシチュエーションや登場人物同士の関係などがわざとわかりにくくなるよう描かれている。頭の中に疑問符がたくさん浮かんだ状態でとにかく読み進めると、第一話の終わりで早くも意外な展開があって「おおっ」となる。
続く第二話でも謎がどんどん深まっていくが、なんとなくこれは「時間もの」ではないようだ。ひとつ謎が解決すると次の謎が浮かんで……というように、なかなか真実が見えてこないのでもどかしいが、中盤で急展開。エエエエ。でもオビにちょっとネタバレがあった。
と、中盤以降はもうハードSFといっていいストーリー。そこに、設定を逆手にとったようなトリックが嬉しい。クローンの記憶という問題をちゃんと説明していて(要するにこれは「記憶」ではないと)、安心した。
ラストはちょっと解釈を悩んだけど、きっとそういうことなんだろう。見返しで新約聖書が引用されているが、これが旧約聖書だったら、その解釈を確信できるのだが。『ノアの末裔』を読み返したくなった。
ところで、第一話のタイトルがないんだけど、これは編集のミス?